<Jabal Rum東壁。どでかい東壁の中央にあるクラックを頂上左肩までつき上げるのがInshallar Factor。15ピッチもある長いルート>
ワディラム・ビレッジから目の前にあるJabal Rumへの緩傾斜帯をゴールドフィンガーに向けてアプローチ。登り切ったところからテラス状の所を右側に回り込むと、ワディラムらしからぬしっかりとしたビレイポイントが現れる。ここがとりつきのようだ。
早速、準備してスタート。
早速、準備してスタート。
1ピッチ目(6B)Marwanリード OS
簡単なクラックを登る。フィンガー部分に乗り移る所が結構悪い。
2ピッチ目(4+)私リード OS
簡単なチムニーを登る。
3ピッチ目(6a)Marwanリード OS
左側にもルートっぽいのが見えるが正面に見えるチムニーからフィンガークラックーを引き続き登る
4ピッチ目(6a)私リード OS
チムニーを引き続き登る
5ピッチ目(6c)Marwanリード OS
核心ピッチ。
当初のハンドサイズのクラックから核心部分はところどころクラックが閉じるフィンガーへと続いていく。核心部分はカムやナッツでプロテクションがとれる所はない。ピトンがベタ打ちされている。
当初のハンドサイズのクラックから核心部分はところどころクラックが閉じるフィンガーへと続いていく。核心部分はカムやナッツでプロテクションがとれる所はない。ピトンがベタ打ちされている。
核心部分は指が入るところが限られていて、結構悪い。確かに6cくらいはあるだろう。
核心を超えたら右側に乗り移っていき、ハンギングビレイ・ポイントへ。
6ピッチ目(6a)私リード OS
<6ピッチ目をフォローするMarwan>
7ピッチ目(5+)Marwanリード OS
8ピッチ目(5+)私リード OS
さらに大きく左方向にトラバース。この辺になると、ビレイポイントもないため、明確なルートは判然とせず、なんとなく「左方向に登った方が良いだろう」という感覚的なルートファインディングで登る。ちなみにここ(下の写真)のクラックは体感6a~6a+くらいはあったので、もしかしたら本当のルートは違うのかもしれない。
9ピッチ目(6a)Marwanリード OS
上部に見える大きなテラスに向かって登る。
10ピッチ目(3)私リード OS
テラス目指してひたすら左に向かって登る。ここもどう見ても3級ではなく6aくらいはありそう。
ただ、ワディラム唯一のトポ「Treks and Climbs in Wadi Rum Jorda」を編纂したTony Howardは、実際にはほとんどのルートを登っておらず、人からの伝聞で書いているというから、トポのグレードの方が間違っているのかもしれない。しかも30年前だし。
ただ、ワディラム唯一のトポ「Treks and Climbs in Wadi Rum Jorda」を編纂したTony Howardは、実際にはほとんどのルートを登っておらず、人からの伝聞で書いているというから、トポのグレードの方が間違っているのかもしれない。しかも30年前だし。
11ピッチ目(3+) Marwanリード OS
上部に見える大きなチムニーに向かって登る
12ピッチ目(2) 私リード OS
トンネル・チムニーの奥に向かってひたすら歩く。どうやらここが最終ピッチへ突き抜ける「Fire-Exit Chimney」のようだ。
<Tunnnel Chimny 内部。ハエがすごい。。。>
13ピッチ目(4+/5) Marwanリード
トンネルの最奥部についたら、そこから頂上に見える開口部へ向かってひたすら登る。
14ピッチ目(5) 私リード OS<Tunnnel Chimny 内部。ハエがすごい。。。>
13ピッチ目(4+/5) Marwanリード
トンネルの最奥部についたら、そこから頂上に見える開口部へ向かってひたすら登る。
15ピッチ目(5) Marwanリード OS
傾斜が緩んできて、開口部が近づいてくると、突然、目の前が開けてお鉢状になった場所が現れる。
ついに終了点だ! 長かった。。。
<終了点の目印となる木>
全ピッチオールOSで終了。総登攀時間は8時間。15ピッチもあるから、かなり時間がかかってしまった。
そして、時間は既に1630。のんびりとしても居られない。
取り急ぎ、下降路として推奨されているEye of Allar方向へと移動。
お椀状の場所から左方向へ移動していくと、洞窟のような場所へと導かれる。
そこが、Eye of Allar のまさに「目(eye)」の部分だ。
<Eye of Allar の洞窟。下から見た時の「目」の部分。>
Eye of Allarの終了点から懸垂をくりかえす。
しかし、3ピッチ降りたところで、ビレイポイントも、ビレイポイントの代わりになるような立木も残置もないテラスに降り立ち、万事休す。ここはホントにEye of Allarのルートなのだろうか?
しばらく降りられそうなところを探してウロウロするも、日が暮れてしまい、真っ暗な夜が訪れた。
左側方向に降りていくと、Great Seqの深い谷。谷底がどれくらい深いのかは暗い中、判然としない。右側方向はJabal Rum東面側で、オーバーハングしているせいか何も見えない。もし懸垂下降で降りていき、ビレイポイントが見つからなかったら、それこそ万事休すだ。
ってことで、ビバークで一夜を明かすことを覚悟した時、Marwanが東面方向へ降りていくことを提案。
真っ暗な中、未知の岸壁を降りるのに抵抗はあったが、ローカルクライマーのMarwanが「大丈夫」だという。きっと何か自信のようなものがあるのだろうか。
テラスから東面方向へ懸垂を開始する。
Marwanが60m降りきったところでコール。続いて、降りていくと、そこはビレイポイントも何もない岸壁の中。。。。Marwanは壁の途中にあるちょっとした突起物にスリングを巻き付け、それをアンカーにしてさらに降りるという。かなり不安なテンポラリー・アンカー。
そして、懸垂が終わったロープを引き抜こうとひっぱると、、、途中でひっかかった! 我々のいる位置から15mほど上方でロープが引っ掛かっているように見える(既に真っ暗なので、ひっかかっている場所も良く見えない)。そして、そこまでの間は、プロテクションもとれないフェース面。さらに、我々が作成した突起物にひっかけただけのアンカーは、支点としての強度は、かなり頼りない。
ってことで、壁の途中でのハンギング・ビバーク(←ほぼ遭難だけど)を覚悟。しかし、Marwanはここから登り返して、ロープを回収してくるという。
しかし、もしMarwanが途中で落ちた場合、プロテクションがとれないだけに、大フォールに伴う大けがは必至。それに加え、今、ぶら下がっているテンポラリー・アンカーは強度的にMarwanの大フォールに耐えられるか、かなり怪しい。
下手すれば、アンカーごと吹っ飛んで、二人とも地面まで真っ逆さまに落ちて叩きつけられる。
かなり悩んだが、ここはMarwanの度胸と技量にかけてみることにする。
Marwanが登り始める。
目の前にある岸壁は砂岩で、すべてが脆い。
しかも誰も登ってない壁なので、ホールドが一つとして信用できない。
そんな中でもMarwanは果敢に暗闇の中を登っていく。
そして、15mほど登って、ついにロープのひっかかりを解除!
しかし、ここからが本番。クライマーならわかるが、実は登り返しよりも、垂直の壁のクライムダウンの方が、はるかに難しい。
慎重にクライムダウンを繰り返すMarwan。そして、5mほど下りたところで、握りこんだホールドが取れた!、、、しかしMarwan、何とか態勢を持ちこたえる。いいぞ!
そして、、ついに、Marwanがアンカーの場所まで戻ってきた。Marwan、あんた、男だぜ!(笑)
二人でロープ回収の成功を祝い、更にテンポラリー・アンカーから60mの懸垂を行なうと、そこはテラスの上。
恐る恐る下をのぞき込んでみると、、、そこはヴィレッジまで続く緩傾斜帯の上。なんとか生還できたようだ。
22時過ぎ、無事、下山。
今までのクライミング人生の中で、最もスリリングな下降でした。。。