March 26, 2007

能登半島沖地震への対応

 3月25日0942、石川県の能登半島沖を震源とするM6.9の地震が起きた。
最大震度が6強で同県や富山県、新潟県の一部にわたる広い範囲で震度5以上の揺れに
襲われ、多数の負傷者と死者が出た。家屋が倒壊し、がけ崩れが起き、石灯籠や大きな
鳥居が倒れた。

 政府は地震発生から3分後に首相官邸の危機管理センターに官邸対策室を設置するなど
1995年の阪神大震災などを教訓に作成された危機管理対応マニュアルに基づき
迅速な対応に努めた。

 首相は発生から1分後に秘書官から連絡受け、公邸に入ったのは発生から2時間後だった。
 対策室設置から数分後にはトップの野田健内閣危機管理官らが官邸に集まり、関係省庁の
局長級による「緊急参集チーム」が情報収集にあたった。
 溝手防災担当相は25日夕、政府調査団の団長として石川県輪島市入りし、
「激甚災害の指定」を検討。

 防衛庁は石川県知事から災害派遣要請を受け、11:18に第14普通科連隊に災害
出動を命じた。当初の活動は航空機や派遣した隊員による情報収集がメイン。

 今回の地震では政府および自衛隊の対応も地元自治体の動きも素早かった。
要請を受けた自衛隊がすぐに現地に入り、救援や被害状況の把握を行った。
また立ち上がったばかりの「緊急地震速報システム」も有効に作用した。

 自然災害に関する危機管理が円滑に起動したことを評価したい。

    

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March 21, 2007

地下鉄サリン13回忌

 丸ノ内線、日比谷線、千代田線の車内でサリンが撒かれ、12人が亡くなり5000人以上が重軽傷となった地下鉄サリンから12年が経った。

 この日、JR東海の新幹線内でサリンが撒かれたという想定で、乗客の非難やサリン除去の合同訓練が実施された。参加したのは警視庁と東京消防庁。
化学防護服を着用した公安機動捜査隊が液体の検知・採取作業を実施する様子が報道された。

 この種の訓練を見ていつも残念に思うのは、必ずと言っていいほど自衛隊の参加がないことである。地域の防災訓練には参加することはあっても、対テロや治安維持に近いような事件についての参加は皆無に近い。警察はなわばり意識があるのかもしれないが、その垣根を飛び越えて、ぜひ自衛隊の参加を要請してもらいたい。

 特にサリンなどの軍事用の化学兵器を用いたテロは、自衛隊には化学防護隊という専門の部隊を保有し、昔から化学兵器の研究を続けているため、警察よりは一日の長がある。

 つい最近まで特定の国に限定されていた災いであるテロリズムは、現在においては世界中の国々の人々が力を合わせて取り組むべき課題になっている。テロリズムは現代社会生活にとって最も危険な脅威の一つになったが、日本においては、起きた場合の対応について完全に整備されているとは言い難い。

 テロリズムは阻止努力と共に、起きたじ後の処置について、計画と予行の実施が不可欠である。諸外国では、当然のように事故完結性を有する軍事組織がその対処にあたっている。

 事件が起きた際の、当初の初動はもちろん警察があたるのだろうが、自衛隊の部隊による化学物質の除染や分析がじ後の予防には大きな助けとなる。

 近年のテロの国際化、ネットワーク化を考えるとなわばり意識を飛び越えた省庁間のネットワーク化が必要だろう。   
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March 20, 2007

イラク開戦から4年

 今日でイラク開戦から4年を迎える。

 フセイン旧政権崩壊後、米国はイラクの民主化を主導、昨年5月には
イスラム教シーア派のマリキ首相率いる本格政権が発足した。

 しかしシーア派とスンニ派の対立は激化の一方で、毎日、多数の米兵が
死亡し(3月18日現在 3218名)、多くの市民も犠牲になっている。

 多くの米兵や市民は、路肩に仕掛けられたIED(即席爆弾)により犠牲と
なっているが、IEDはあらゆる物に形を変え仕掛けられるため、十分に
訓練された部隊といえど、その発見は困難だ。
 私もイラクにいた時、事前に日本でIED発見の訓練を十分に受けたものの
実際の任務で発見できるかどうかは、はっきり言って自信がなかった。

 したがって現在の形の米軍による治安維持作戦(掃討作戦を含む)を
続けるだけでは米軍及び市民の犠牲者の増加を抑えることは不可能だろう。

 また、最近では武装勢力からの攻撃に塩素ガスが使われる等、自爆テロの
方法もより高度化・複雑化してきている。
(もっともこれについてはイラク撤収の世論がたかまりつつある米国内での
世論をかわすための情報操作の側面も否定できないが)

 米国は石油利権を確保しておきたいという思惑があるのかもしれないが、
一度、イラク駐留に関する戦略全体(増派も含む)を見直した方が良い。
対テロ戦略の基本に忠実に、勢力による押さえ込みから情報戦へと
変換した方が良いだろう。

 軍事的プレゼンスだけでは、テロを抑えこむことはできない。   
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March 18, 2007

対米追従戦略の是非

 3月11日付けのファイナンシャルタイムズで『新しいセブンシスターズ
(石油のアップストリーム)の登場』という記事が出た。

 それによると石油利権はこれまでの米英に本拠を置く企業から
露・中や中東の開発途上国の企業へと勢力分布が変わってきているとある。

 エネルギーを制する者は世界を制する、というのは第2次大戦の結果を
見ても明らかである。もともと日本が開戦に踏み切ったのも石油資源の
獲得というのが大きな理由であった。

 この記事や2月下旬に起きた中国株式市場に端を発した世界的な株式の
暴落は、これまでのように対米英追従一本槍の外交は非常に危険
であるということを表している。

 もはや米英が世界の経済の中心というのは間違いだ。世界は多極化している。   
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March 15, 2007

「慰安婦」騒動

 米国の連邦議会に提出された「慰安婦決議案」をめぐる騒動は日本に
仕掛けられた情報戦といえるだろう。

 対応を誤れば国際世論で日本が強制的に行わせたという「既成事実」
が独り歩きしてしまう恐れがある。日本の名誉や地位を守るために
情報戦略の立て直しが急務だ。
  
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March 13, 2007

米で慰安婦問題に関し非難決議

 慰安婦問題に関して米下院で非難決議案が提出される見込みだという。
 現在、6カ国協議で北朝鮮との拉致問題について話し合いが行われている
微妙な時期だけに、何か裏があると感じてしまうのは邪推だろうか。

 慰安婦の問題では、レイプされた(?)女性が積極的にメディアに登場し
これでもかと当時の状況を(真偽は別として)語っている。これが
米国人の好きな「人権重視」と合致したのだろう。
 
 慰安婦問題については、日本でも徹底的に事実を再検証して、いわれなき
罪であれば、そのことを世界に訴える必要がある。

 と、同時に、拉致問題での日本の対応については、
慰安婦問題で韓国の行ったPR手法からもっと学ぶ必要があるだろう。
今後はもっと拉致被害者本人や家族の記者会見を
どんどん行い、国際社会(世論)に訴えていくのが有効な戦略だ。
 また、同様の拉致被害にあっていると推定される韓国やタイ、マレーシアと
いった国々と協同で調査団を組み(費用は日本が負担しても良いから)、
拉致問題を2国間の問題とすることなく、多国間での交渉の場にひきずり
出してやればよい。

 このまま2国間の問題としたままでは、北朝鮮の思うつぼだろう。
人権や自由にからめて世論を味方につける。それがしたたかな外交というもの
だ。   
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March 09, 2007

6カ国協議 日朝作業部会 進展なし

 予想通りの結果と言った所か。
 しかし、だからといって、あきらめてしまうのは、まだ早い。

 協議を進展させるためには他国と連携をとり
北朝鮮を国際社会から孤立させる事が必要だ。
北朝鮮の狙いは他の5つの作業部会を上手く乗り切り、
逆に日本を孤立化させることにあるのだろう。

 外交下手の日本がこの危機を乗り切るためには、国際世論を味方に
つける必要がある。もっと拉致問題を国際社会に向けて
PRする必要があるだろう。   
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March 06, 2007

日本の核武装に関する論議

 日本の核武装に関する論議は封じられている。
それどころか非核3原則に関する論議すら忌避されている。

 東京にもし核兵器が使用された場合の被害予想を
産経新聞が予測している。
長崎に投下されたタイプのプルトニウム型原爆が東京を
直撃した場合、最低、死者50万人、負傷者300~500万人
ということだ。

 自民党中川政調会長や麻生外相が、核を含む安全保障のあり方について
再度話し合う必要があると提起しただけで、政府・マスコミから
猛反発を受けた。

 議論することすら許されないという体制は異常と言わざるを得ない。
まるで太平洋戦争当時、日本が負けるという話すら許されなかった
時と状況が似ている。

 イギリスがソ連の核の脅威に対し、米軍製ミサイルの配備を決定した時、
当時のサッチャー首相は
「日本が被爆したのは、日本が核を持たず、報復能力がないと判断された
からだ」
と述べている。

 冷戦秩序や印パ対立からも見て取れるように、結局、軍事とはバランス
であり、核の脅威には核で立ち向かうしか方法はないという客観的事実を
我々は認識する必要がある。

 日本は米国の核の傘に入って安心と構えている。しかし実際問題として
米国が高いリスクを負って日本を核攻撃から守るのかは疑問を隠せない。
自国の最終的な利益を考えるのが「軍事力の行使という外交」だからだ。
フランスが独自の核保有に踏み切ったのは米国の核の傘への不信感からである。

 経済支援だけでは核廃棄は買えないのは中国の核武装化を見ても明らかだ。
  
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March 05, 2007

米が日本人拉致事件を提起

米政府が米朝関係正常化のための作業部会で日本人拉致事件を提起した。

米国の思惑は、先般合意に至った北朝鮮に対するエネルギー支援に、
日本が加わることで、米国の負担分が2割ほど減ることにあるのだろう。
また、それに加え、拉致問題は米国が外交上掲げる「人権重視」と合致する。

これは好機である。

7日からの日朝作業部会で拉致問題解決へ向け具体策を提示することが重要だ。
外交上の会談は主導権争いでもある。北朝鮮の出方に主導権を与えてはならない。
1作業部会が遅れることで他の5つの作業部会全体に影響を与えることを恐れてはならない。

最終的な自国の利益を考えることが「外交」なのだから。   
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